【USJの事例に学ぶ】勝率97%の森岡流マーケティングと戦略思考

出典:PRTIMES
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あなたは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を訪れたことがありますか。
ご存知の通り、「ハリーポッター」や「後ろ向きジェットコースター」等のアトラクションや「ハロウィーン」等のイベントで、今や東京ディズニーランド(TDL)と双璧をなす超人気テーマパーク。
私も、今夏 USJを初体験しましたが、同社が掲げる「最高の感動を届けるブランドを世界中から集めたセレクトショップ」のコンセプト通り、妥協を許さない、攻めのマーケティングスタイルをひしひしと感じることができました。
しかし、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのUSJですが、2004年、開業3年目にして事実上の経営破綻をしていたことをご存知でしょうか。
そのような瀕死のテーマパークを、どのようにしてTDLを抜いて日本一の集客数(2015年10月単月)を実現するまでにV字復活させることができたのか。
USJ奇跡の復活劇の影には、一人の敏腕マーケターの存在がありました。
その名も、森岡毅・元CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー/最高マーケティング責任者)。
その復活劇は、映画になってもおかしくないほどの非常に感動的なものでした。
マーケティングの本にも関わらず、感動に涙しながら読ませていただいた森岡氏の著書をひもときながら、その奇跡の復活劇をご紹介してまいりたいと思います。
この記事を読み終える頃には、あなたはマーケティングのすばらしさに心から魅了されることでしょう。
そして、マーケティングの本質を理解したあなたは、ここで得た知識をあなた自身のビジネスに即生かせるようになっているはずです。
目次
1 最強マーケター森岡 毅・元CMOとは
森岡氏は、1972年生まれ。神戸大学卒業後、P&G Japan「マーケティング本部」に入社。以後、マーケティング畑一筋の生粋のマーケターです。P&G時代、担当ヘアケア商品の売り上げを3倍に跳ね上げるなどの功績が認められ、2009年、USJを立て直す使命を受けヘッドハント入社されたという輝かしい経歴をお持ちです。
※2017年1月、『USJ再建を成し遂げ、使命を果たした』として退社。
しかし、P&G時代は「野武士」と呼ばれ、長いものに巻かれない無骨なお人柄、数々の修羅場をくぐり抜け、時には叩きのめされ、心折れることも多数経験されました。
CMOとなった現在も、睡眠時間3時間で誰よりも努力し続けているという、人間としてとても魅力あふれる方なのです。
只者ではないのでござる(≧∇≦)
そう、そんな侍マーケター(勝手に名付けてすみません)森岡氏から、現場で磨き抜かれた最強のマーケティングを学ぶべく、著書「USJを劇的に変えた、たった一つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」を読んでみたところ・・・
マーケティングの入門書として、実にわかりやすく、かつ森岡氏の熱い志に思わず泣けてくるような、感動的ですばらしい良書でした。私の中では、今年No.1のビジネス本。何度も読み返したい1冊です。
森岡氏が実践しているマーケティング思考は、マーケターに限らず、私たちのビジネス全てに応用可能な手法とも言われています。
森岡氏は言います。「マーケティング思考』はすべての仕事の成功確率をグンと上げる」。
その証拠に、USJの場合、かつて30%程度だった新事業の成功率が、森岡氏のマーケティング思考導入後は、5年間で97%という驚くべき成功率を上げているのです。
ビジネスマンなら誰でも知っておきたいマーケティング思考なのです。
出典:PRTIMS
森岡毅 株式会社ユー・エス・ジェイCMO
USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門 著者:森岡 毅
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2 USJはどのようにしてV字復活したのか
USJ復活のために、「変えた項目は数百では済まないくらい列挙できます」と森岡氏。
その膨大な変更点の中で、売り上げアップのために行った代表的な施策として、以下三点を挙げています。
2.1 ターゲット客層の幅を広げる
「映画の専門店」→「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」に客層を拡大。
低年齢の子供連れ家族の集客強化のため、ファミリーエリア(ユニバーサルワンダーランド)を投入。
関東から「3万円の川」(新幹線代)を渡らせ、海外から「30万円の海」(飛行機代)を渡らせるため、強力な集客力のアトラクション「ハリー・ポッター」に巨額の予算を投じる。
2.2 TVCMの質をアップ
「世界最高を、お届けしたい」という新しいブランド・キャンペーンを立ち上げ、来場意欲を沸き立たせる強力なTVCMを開発しました。
2.3 チケット価格の値上げ
5年間で大人5800円→7400円 単価を1.2倍、集客数を1.9倍にした。
上記を始めとする様々な施策に共通点する、V字復活の原動力となったカギは、
「消費者視点という価値観と仕組みにUSJを変えたこと」
マーケティングが機能していなかった頃のUFJでは、クリエイティブ部門が「お客様に喜んでもらえるだろう」という予想のもと、作りたいものを作っていたと言います。
森岡氏は、独自の手法を用いて徹底的に顧客ニーズを調査。消費者視点に基づき、「作ったものを売る会社から、売れるものを作る会社」に変えたことが成功の秘訣だったのです。
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3 マーケティングとは何か?
マーケティングについては様々な表現で定義がなされています。
経営学の父ピーター・ドラッカー氏は「マーケティングの狙いはセリング(売る行為)を不要にすることだ。マーケティングの狙いは顧客を知り尽くし、理解し尽くして、製品やサービスが顧客にぴったりと合うものになり、ひとりでに売れるようにすることである」(出典:マネジメント基本と原則)
現代マーケティングの父フィリップ・コトラー氏は「「マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセスである」(出典:コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント)
さて、森岡氏はというと次のようなシンプルな言葉で説明されています。
「マーケティングとは、『人を幸せにするために徹底された科学』」
「『商品を売る』のは営業の仕事、『商品を売れるようにする』のがマーケティングの仕事。」
「マーケティングの本質とは、売れる仕組みを作ること」
この売れる仕組みをどのようにして作り上げるのか。
それは、消費者と商品(ブランド)の接点を制する(コントロールする)ことで売れるようになると言います。
主なものは「消費者の頭の中を制する」「店頭を制する」「商品の使用体験を制する」の3つ。
消費者の頭の中を制するためには
自ブランドの認知率を高め、選ばれる必然となるようなブランド・エクイティ(消費者が認識しているそのブランドへの一定のイメージ)を意図的に構築することが大切です。
マーケティングの最大の仕事は、消費者の頭の中に「選ばれる必然」を作ること。そのための活動を「ブランディング」と呼びます。
強固に築き上げられたブランド・エクイティはまさに最強の「目に見えない資産」として、そのブランドを他のブランドと差別化し、競争を有利に展開させる原動力となります。
森岡氏は、「ブランディングにおいて重視すべきは短期での売り上げではなく、中長期でのブランド価値の向上である」と言います。
「消費者を大きく落胆させる商品ならば、ブランド価値を大きく損なうため、世の中に出さない方がマシ。消費者は絶対に騙せない、ごまかせない。お金を払った後のネガティブな記憶を甘くみてはいけない」と警鐘を鳴らしています。
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4 マーケターってどんな人?
マーケターとは「マーケティングができる人」のことを指し、消費者理解の専門家です。
ドラッカー氏の言葉を借りれば、「顧客を知り尽くし、理解し尽くして」いる人と言えるでしょう。
森岡氏はマーケターについて次のように述べています。
「会社の進むべき方向を見極める「頭脳」としての存在、企業の「軍師」ともいうべきマーケターの最初にすべき最重要な役割は「どう戦うか」の前に「どこで戦うか」を正しく見極めること」
「マーケターの仕事とは、異なる意見を取りまとめて「落とし所」に収めることではなく、あくまで「消費者最適」の施策を遂行するために自分起点で周囲を説得し倒して、人を動かすこと。
自分以外の全員を説得して巻き込んでいく気概が必要」
企業の「頭脳」「軍師」となると、相当優秀な人でないとマーケターにはなれない印象ですが、森岡氏は、特別な優秀さは必要ないと言います。
それよりも、下記に記載したような適性を持っている人こそマーケターに向きだと。
4つすべてが当てはまる必要はなく、どれか一つでも該当していればOK。
あなたは、マーケターに向いていますか。
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5 マーケターに向いている人
- リーダーシップ(人を動かすことで結果を出す統率力)の強い人
- 考える力(戦略的思考の素養・問題解決能力)が強い人
- 精神的にタフな人
- EQの高い人
※EQ:心の知能指数(英: Emotional Intelligence Quotient)。心の知能とは、自己や他者の感情を知覚し、また自分の感情をコントロールする知能を指す(出典:ウィキペディア)
EverydayQunqunしとるし〜( ´Д`) ※筆者(キュンキュンってなんや!)
次に、優れたマーケターになるために最も必要なスキルは何でしょうか。
それは「戦略的思考能力」を身につけることだと森岡氏は言います。
マーケター以外の職種においても、「戦略的思考を身につけることによって、仕事の成果は抜群に上がり、説得力は激増する。すべてのビジネスマンが身につけるべき思考法」と述べています。
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もし、あなたが優れたマーケターを目指すなら、このマーケティング手法も必ず押さえておくべきでしょう。
⇒【2017年完全版】プロダクトローンチとは?具体的な手法と3つの事例を徹底解説!
6 戦略とはなんぞや? 戦術とはどう違うのか?
6.1 選択と集中
戦略とは、目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」のこと。
もっと簡単な言葉に言い換えると、
「戦略とは、何か達成したい目的を叶えるために、自分の持っている様々な資源を、何に集中するのかを選ぶこと」=「資源配分の選択」
なぜ、戦略が必要なのでしょうか?
それは「達成すべき目的があるから」&「資源が常に不足しているから」
※6大経営資源:カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産
戦略の核となる考え方が、ゼネラル・エレクトリック社元CEOジャック・ウェルチの施策で有名になった「選択と集中」という考え方。
個人の仕事に当てまめると、例えば上司から依頼された10の仕事のうち3つの仕事に注力し、あとは7つは捨てる(断る)。
重要な3つの仕事は、100点、80点、80点を狙う。
「とりあえず全部やろうとすることは、無意味に資源を分配させているだけの『戦略ない愚か者』のすること」と森岡氏はバッサリ切り捨てます。
6.2 戦略と戦術の違い・目的と目標の違い
目的とは、達成すべき使命。戦略思考の中では最上位の概念。
目標とは、その目的を達成するために経営資源を投入する具体的な的(ターゲット)のこと
別の言い方をすると次のようになります。
目的:OBJECTIVE(達成すべき使命)
目標:WHO(ターゲットは誰か?)
戦略:WHAT(何を売るか?)
では、戦略と戦術はどちらが大切なのでしょうか。
下記マトリックスには戦略と戦術の4パターンの組み合わせが書かれています。
これをビジネスの結果が良い順番に並べるとどうなるでしょうか。
Aが一番であることは誰でもわかりますね。
一番ダメなのはCでしょう・・
ところが!
正解は「A→B→C→D」
戦略>戦術。
森岡氏曰く「『どう戦うか(戦術)』より『どこで戦うか(戦略)』を正しく見定めることが何よりも重要」。
ふむふむ、戦術より戦略が大切なのは、わかりました。
でもなぜ、CよりDの方がダメなのか・・不思議ですよね。
その理由は、森岡氏の以下の言葉が非常にわかりやすく説明されています。
「戦略が強いと正しい方向へ進む、戦術が強いと遠くまで飛べる」
Dは戦略が悪ですから悪い方向へ進み、かつ戦術が良いので遠くに進む。
つまり、悪方向へどんどんと進んでしまうわけです。
しまったと気づいても、もう引き返せないといったことが起きてしまう。
それに対して、Cは戦略も戦術も悪いから、どこにも進まないため、いつでもやり直しがきくということなんですね。
考え方の順番としては、目的→目標→戦略→戦術と大きなところから順に決めていくことが大切です。
6.3 良い戦略と悪い戦略の見分け方
戦略の良し悪しを判断する最も典型的な方法が「4Sチェック」です。
「目的を達成するために経営資源をどこに集中させるかという選択」のチェックに使います。
戦略の4Sチェック
-
Slective(セレクティブ:選択的かどうか?)
やることとやらないことを明確に区別できているかどうか
-
Sufficient(サフィシエント:十分かどうか?)
戦略によって投入されることが決まった経営資源がその戦局での勝利に十分であるかどうか
-
Sustainable(サステイナブル:継続可能かどうか?)
短期ではなく中長期で維持継続できるか
-
Synchronized(シンクロナイズド:自社の特長との整合性は?)
自社の特長(強みと弱み、あるいは経営資源の特長)を有効に活用できているか
USJを例にとって4Sチェックを見てみましょう。
森岡氏入社前の同社の戦略は「映画のだけのパーク」でした。
この「映画のだけのパーク」戦略を4Sチェックしてみると・・
当時は、経営難で資金が足りないという社内事情がありました。
対して、版権料や建設費など莫大な費用がかかるハリウッド映画のアトラクションを導入することは、
明らかにSynchronized(シンクロナイズド:自社の特長との整合性は?)は×。
したがって、Sustainable(サステイナブル:継続可能かどうか?)も×。
もちろん、Sufficient(サフィシエント:十分かどうか?)についても、全く十分ではない。
と考えてくればSlective(セレクティブ:選択的かどうか?)は議論するまでもありません。
ということで、4Sのどこにも強みがなく実行不可能な戦略だったことがわかります。
そこで、森岡氏は「迷わずブランド戦略を『世界最高のエンタメを集めたセレクトショップ』に変更した」わけです。
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7 森岡氏の思考を支えるマーケティング・フレームワークとは?
マーケティング・フレームワークとは「マーケティングの課題に取り組むにあたって、その型に沿って考えていくと、「整合性のある戦略と戦術」を生み出しやすくなる便利な道具」のこと。
7.1 戦況分析
「マーケター」と言っても強みに合わせて様々なタイプが存在しています。
宣伝広告に強いタイプ、人の感情の動きなどに敏感な質的調査に強いタイプ、統計データを駆使して社会的現実を数値で表す量的調査に強いタイプなど。
森岡氏の場合は、自身を「数学マーケター」と呼ぶほど数字に強く、それゆえ、この戦況分析を非常に重視しているといいます。
「戦況分析とは、「市場構造」をよく理解して、それを味方につけるためにやるのです」
「戦況分析を本気でやる理由は、市場構造に逆らって確実に失敗する「地雷」を避けるためです。そしてできればその市場構造を自分の味方につけられるような戦略がないかを考えるためです」
戦況分析によってもたらされた情報資源(市場の理解、消費者の理解、競合の理解、経営資源の理解など)を土台にして、適切な目的を設定し、WHO(誰に?)を決定し、そのWHOに対してWHAT(ブランド価値のどの部分を訴求するのか?)を決定し、最後にHOW(どうやってWHOにWHATを届けるのか?)を決定していきます
7.2 5C分析
5C分析とはもっとも一般的な戦況分析の視点で、通常は「3C分析」という言葉が有名です。
最近は、自社を取り巻くビジネス環境を理解するにあたり、5つの領域に着眼すべきであるということで5C分析が主流になりつつあります。
ただし、森岡氏が述べる5Cは、通常よく耳にする5C(Company・Customer・Competition・Collaborators・Context)とは若干異なります。
消費財業界ならではの5Cなのかもしれませんが、
Collaborators(協力者)⇒ Customer(流通などの中間顧客の理解)
Context(背景)⇒ Community(ビジネスを取り巻く地域社会の理解)
と考えれば、ほぼ内容は同じになります。
Company(自社の理解)
自社の全体戦略を理解すること。自社の使いうる経営資源をできる限りたくさん把握すること。自社の能力や性格としての特長(強み・弱み)を把握すること。
Consumer(消費者の理解)
マーケティングは消費者理解に始まって消費者理解に終わる。
消費者を量的に理解すること(数値データを用いて広く全体像を理解するのに役立つ)。消費者を質的に理解する(質的調査などを通して消費者の深層心理に迫ること)
優れたマーケターの強力な武器 → 消費者インサイト → 消費者自身が気付いていない(あるいは直視したくない)隠された真実を衝き、消費者の心を大きく動かすことができる。
Competitor(競合他社の理解)
同業界のライバルだけでなく、広義においての競合理解が必要。
(例)USJの場合、「ストレス解消」という消費者ニーズの土俵で戦っているため、競合はTDLなど遊園地やテーマパークだけでなく、水族館、映画館、カラオケ、ボーリング、ショッピングモール、魚釣り、ハイキング、スマホなどが該当する。
— ここまでが3C分析 —
Customer(流通などの中間顧客の理解)≒ Collaborators(協力者)
自社と消費者の間にいる存在。味方(パートナー)でもあり、競合(ライバル)でもある。業界の特性も理解する必要がある。
Community(ビジネスを取り巻く地域社会の理解)≒ Context(背景)
社会がビジネスに与える様々な外部要因。自社ではコントロールできない
法律などの規制、世論、税率、景気、為替レートなど。
7.3 目的(達成すべき使命)の設定
適切な目的設定の指針は以下の3つ。
-
実現可能性
高すぎず低すぎず。ギリギリ届く高さを狙う。
-
シンプルさ
USJの場合→「開業年度の過去最高集客数(1100万人)を大きく超えること」
-
魅力的かどうか
USJの場合→「この苦しさは、何としてもハリー・ポッターを建てるためである」と、関係者の士気が上がるような目的にする。
7.4 WHO(誰に売るのか?)
「ターゲットとなる消費者は選ばねばならない」
なぜ、ターゲットを選ぶ必要があるのでしょうか。
理由1:ターゲット一人当たりのマーケティング予算が十分となるようにするため
理由2:消費者全体の中でも「買う確率」や「購買欲」に大きな偏りがあるため
理由3:満たすべき消費者ニーズにも偏りがあるため
「万人に向けて作った商品が、誰に取っても最高のものになるとは限りません。
むしろ誰に取っても中途半端な商品になる可能性が高いのです」
戦略ターゲットとは?
→ ブランドがマーケティング予算を必ず投下する最も大きなくくり
これ以外は完全に捨てる。
注意すべきは、この戦略ターゲットのくくりが目的達成に照らして小さすぎないようにすること。
コアターゲットとは?
→ 最も手厚くマーケティング予算を使用される消費者グループ
例)テーマパークのような大衆ビジネスの場合、戦略ターゲットは全体の8割、コアターゲットは全体の1〜3割
消費者インサイトとは?
これが、消費者インサイト なのだ!(キュンキュンもね☆)
ここを、ちょこんとつつくと、お客さんは「どうしてもほしい!」「行きたい!」となるのですぞ。ムフフ、悪用厳禁ですな。
消費者インサイトとは、「消費者の隠された真実」のこと。
消費者が自覚している、「消費者ニーズ」とは全く別物。
本人も気づいていないか、あえて考えないようにしている深層心理のことを言います。
インサイトをつかれることで、消費者は商品のベネフィット(商品から得られるメリット・課題や悩みに対する解決策)を大幅に理解しやすくなったり、手に入れたくなったりするのです。
消費者の認識を大きく変えるインサイトを
「マインド・オープニング・インサイト」→理性をはっとさせます。
消費者の感情を大きく動かすインサイトを
「ハート・オープニング・インサイト」→感情をえぐります。
【ハート・オープニング・インサイトの例】
2010年 USJのクリスマス戦略
「いつか君が大きくなってクリスマスの魔法が解けてしまうまでに、あと何回こんなクリスマスが過ごせるかな‥‥」
というナレーションとともに父親と娘がUSJでクリスマスデートをするTVCMを放映。
父親の娘に対するインサイト(娘が成長し、父親から離れていってしまうことへの恐れ)を刺激
↓
この結果、クリスマス集客は、パークにおけるクリスマスの内容は前年までと全く変えていないにもかかわらず、前年に対し倍増した。
↓
こちらがそのCM。共感したお父さん達が多かったんだろうなと思います。
2010年ユニバーサルワンダークリスマスTVCM
7.5 WHAT(何を売るのか?)
「人々は1/4インチのドリルを欲しいのではない。
人々が欲しいのは1/4インチの穴である」(ハーバード大学レヴィット博士)
「消費者が欲しいのはアトラクションではなく、アトラクションを体験した時に巻き起こる「感情」です。USJの場合、アトラクションやイベントではなく「感情」こそがWHAT」(森岡氏)
「なぜ、TDLに行くのか?」のゲストの典型的な回答は「ミッッキーマウスに会えるから」「ディズニー映画の世界に浸れるから」。
しかし、TDLの戦略としてのWHATは「幸福感」ではないかと森岡氏は言います。
ミッキーに会えた時、美しい夢の世界に入り込んだ時、ゲストの心の中で起こっている大きな変化は何か?
TDLは「幸せ」を、ディズニーのHOW(どうやって売るのか)で差別化して売っている。
「幸福感」と言う究極に大きくて強いベネフィットを売っているのだと。
消費者が求めているものは、体験から得られる「感情」なのです。
7.6 HOW(どうやって売るのか?)
商品企画に欠かせない思考法 マーケティング・ミックス(4P)
売り手視点から見た売れる仕組み作りのプロセス( WHATをWHOに届ける仕掛けの事)
Product(製品をどうやって作るか)
Price(価格をどう設定するのか)
Place(流通をどう設定していくのか)
Promotion(どうやって顧客に販売促進するのか)
※マーケティング・ミックスについて、4Pは売り手視点であり、顧客視点に立っていないという批判を受け、ロバート・ラウターボーン氏が提唱したものが「4C」。
4Pを設定する前に、顧客の立場に立って4つの購入メリットを検討すべきだとした。
4Pにせよ、4Cにせよ、自分のセンスで判断するのではなく、深く理解した消費者の視点からHOWを判断すれば良い。と森岡氏。
森岡氏は徹底的に消費者を理解するために、P&Gのヘアケア担当時代は、髪の毛を金髪にしたり、赤いモヒカンにしたり、USJでは、モンスターハンターを999時間プレイしたり、ドラゴングエストXを5000時間プレイしたり、とにかく何でも自分でやってみて消費者視点を理解することを優先したといいます。
「強いブランドをUSJに導入し成功させるには、ファン心理の理解が不可欠。それがないと強いWHATを思いつけないですし、HOWもわからないのです」
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8 ハロウィーン・イベントはなぜ爆発的に成功したのか?
「WHO、WHAT、HOW‥。これら一つ一つを全て上手に組み合わせると、市場にとてつもない変化が生まれ、爆発的なビジネスの成功が生まれます」と森岡氏は述べています。
その圧倒的な事例として、森岡氏が紹介している2011年のハロウィーン・イベントの成功物語。
マーケティングの素晴らしさ、美しさ、醍醐味を心から感じることができます。
目的
2011年のUSJ10周年記念にあたり、資金難で新しい設備投資の予算が全く取れない中、劇的に集客を伸ばすアイディアとして着目したのが、ハロウィーン。徹底的な戦況分析の結果、伸び代が大きい未開拓のシーズンとして前年比14万人増の集客を目的に掲げた。
WHO
戦略ターゲットは、「テーマパークが嫌いでない人」
コアターゲットは、9月10月は若い女性を中心にレジャー需要が高まることから、独身女性層とした。
WHAT
徹底的にコアターゲットである独身女性について調べた結果(消費者理解)、「日本の女性は、ストレスのたまりやすい社会環境に置かれているのに、安心してストレスを発散できる手段に恵まれていない」という事実を発見。
そこから導き出された消費者インサイトは「本当は自分をさらけ出してはじけたいけど、なかなかできない」。
そこで、「思い切り叫んでストレスを発散できる!」というWHATで勝負することに決定。
HOW
マーケティング・ミックス4Pで検討した結果、「思い切り叫んでストレスを発散できる!」場として、「ハロウィーン・ホラー・ナイト」を企画。
パーク全体が、ゾンビがうじゃうじゃ練り歩くホラー映画の舞台のようになり、そこにすべてのゲストが巻き込まれるというもの。設備投資不要。アルバイトでゾンビ役を雇えばよく、当時の資金難の状況に最適だった。
Promotion
当時、好感度No.1のベッキーさんを起用し、「怖いけど面白い、楽しい!」という間口の広いWHATに集中してTVCMを開発。関西地区中心にオンエア。
結果
設備投資はせずに、ゾンビを雇っただけで、目的の14万人を大きく超える40万人の集客をすることができた!
ハロウィーン・シーズンは、その後も毎年成長を重ね、2015年10月にはTDLを超える175万人の集客で日本一の座を獲得した。
実は「14万人」という目的は例年の集客の倍。必死に頑張って届くかどうかという数値。
設備投資ができない、限られた予算の中で、そのような高い目的を掲げ、一見不可能とも思える状況にも諦めることなく、黙々と戦況分析をする。そして、数字に裏打ちされた緻密なマーケティング思考で、一見奇跡とも思えるような結果を出すことができたこの事実には、驚きと感動を隠せません。
森岡氏は次のように述べています。
「マーケティングは消費者の購買行動を決定的に変える力を持っています。それぞれ正しいWHOとWHATとHOWが噛み合った時、凄まじい爆発力を発揮するのです。そのために、最も大事なことは、戦況分析を徹底的に行うことと、消費者理解に徹底的に自分の時間を投資すること。これができれば高確率でビジネスを成功させることができるのです」
あぁ、インサイト、つかまれたわ〜(≧∇≦)
まとめ
就任後5年間で新規事業成功率97%という驚異的な数字を挙げながら、USJをドン底からV字復活させた、森岡CMO(Chief Marketing Officer)のマーケティング術をご紹介してまいりました。
ここで、改めて、まとめてみましょう。
消費者視点という価値観と仕組みを徹底
→「作ったものを売る会社から、売れるものを作る会社」へ
戦況分析→目的(達成すべき使命)→目標(WHO誰に?)→戦略(WHAT何を?)
→戦術(HOWどうやって?)の順に決定していく
→「6 ハロウィーン・イベントはなぜ爆発的に成功したのか」参照
徹底した戦況分析(5C)によって目的(達成すべき使命)を設定
5C分析
- Company(自社)
- Consumer(消費者)
- Competitor(競合他社)
- Customer(中間顧客)
- Community(外部要因)
→ハリー・ポッターを成功させ、開業年度の過去最高集客数1,100万人を大きく超える集客の実現
目標(WHO/誰に?)は戦略ターゲットとコアターゲットに分けて予算投入
→「『娘を手放したくない』という父親(コアターゲット)の持つ根源的な恐れ」である消費者インサイト(消費者の隠された真実)を巧みについたTVCMで、クリスマス集客を倍増
4Sチェックを用いて、戦略(WHAT何を売るのか?)を明確化
・Slective(セレクティブ:選択的かどうか?)
・Sufficient(サフィシエント:十分かどうか?)
・Sustainable(サステイナブル:継続可能かどうか?)
・Synchronized(シンクロナイズド:自社の特長との整合性は?)
→「映画だけのパーク」から「世界最高のエンタメを集めたセレクトショップ」へ戦略を変更
消費者が本当に欲しいものは、アトラクションやイベントではなく、体験から得られる「感情」
マーケティング・ミックスを用いたHOW(どうやって売るか?)の確立
→Product:関東から「3万円の川」(新幹線代)を渡らせ、海外から「30万円の海」(飛行機代)を渡らせるため、強力な集客力のアトラクション「ハリー・ポッター」に巨額の予算を投じる
→Price:5年間で大人5800円→7400円 単価を1.2倍、集客数を1.9倍にした。
→Promotion:「世界最高を、お届けしたい」という新しいブランド・キャンペーンを立ち上げ、来場意欲を沸き立たせる強力なTVCMを開発
上記がUSJにて適用された最も基本的なマーケティング思考の方法です。
マーケティング・フレームワークとしては、他にもたくさんの方法ありますが、まずは、シンプルに、上記プロセスにてあなたの仕事に適用してみてはいかがでしょうか。
個人で事業をされている方にとっても、安心して選択・決断することができる使い勝手の良いツールではないかと思います。
そういや、オイラも一応、マーケターなんだぜ。 忍者ではないんだぜ。
ついでに、スギちゃんでもないんだぜ。(ちょっとネタが古いんだぜ)
おわりに
いかがでしたでしょうか。
今や、外国人観光客にも大人気のUSJ。かつて事実上の経営破綻をしていたことなど、どこを見ても信じることができないほど、勢いとパワーに満ち溢れています。
この、文字どおりのV字復活を支えたのが、マーケティングの力でした。
マーケティングポジションは、企業の中の花形でもあり、人気職種です。
キャリア・アドバイザーをしていた頃、求職者の人気No.1の職種はマーケティングでした。
ところが、「マーケティングをやりたい」と答えた人に、マーケティングの具体的な仕事内容を尋ねると、はっきり答えられない人がほとんどでした。
広告代理店やメディアとのやりとりのような華やかなイメージを持つ人が実に多かったものです。
以外と知られていないマーケティングの仕事ですが、これを機会に多くの方が実際の職務内容を知り、優秀なマーケターが数多く排出されたら素晴らしいなと思います。
今回、森岡毅CMOの著書を通じて、マーケターの思考法、仕事の手順、目的実現への想い、その結果としての奇跡のような復活劇を学ぶことができ、マーケティングの魅力を改めて感じました。
「よし、自分もマーケターになろう!」と思われた方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、森岡氏の著書の中のマーケティングスキル的な側面についてご紹介をさせていただきましたが、興味を持たれた方はぜひ、書籍をご購入いただき、じっくりとマーケティングの醍醐味を味わって頂きたいと思います。
実は、著書の後半では、マーケティングの話にとどまらず、震災での経験や自身のキャリアを振り返り、後悔しない生き方についてのお話も愛に溢れた熱い言葉で綴られています。
読んでいて感動で胸が熱くなる素晴らしい内容でした。
USJの復活劇の裏側を知った今、新しいイベントの告知などを目にする度、感慨深い気持ちになります。古いアトラクションの終了、新しいアトラクションの建設、その裏で、相変わらず森岡氏は1日3時間の睡眠時間で奮闘し続けているんだろうなと。
常に攻め続けなければ、あっという間に飽きられてしまう厳しい世界です。
心が休まらない大変な仕事だなと思うと同時に、これくらいエキサイティングにビジネスに燃えられたら、どんなにやりがいに満ちた人生となるだろうと羨ましさも感じます。
「マーケティングが日本を救う」
日本を愛する侍マーケター森岡氏のこの言葉は、私たち日本人をおおいに勇気付けてくれます。
多くの方がマーケティングを学び、優秀なマーケターが世の中に溢れ、再び日本が世界を牽引する日が来ることを夢見ずには入られません。
USJがV字復活したように、日本もいつの日か必ず・・
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